
生活保護の不正受給は一時期大問題になったため、多くの日本人が知っているでしょう。
むしろ、生活保護という単語を聞いてとっさに不正受給を連想することもあるかもしれません。
ここでは、そのように日本人に強く認識されている、生活保護の不正受給についてまとめていきます。
生活保護の不正受給・3つのパターン

まず、生活保護の不正受給の代表的なパターンを3つに分けると下のようになります。
- 個人による虚偽申告
- 暴力団による組織的犯罪
- 外国人による集団詐欺
以下、これら3つのパターンについて解説していきます。
個人の虚偽
生活保護の不正受給でもっとも多いのはこのパターンです。
収入があるのにないと申告する、資産があるのに隠すなどのパターンがあります。
たとえば新宿の歌舞伎町でクラブを運営していた女性は、1億円近い年収がありながら無収入を装い、生活保護を不正受給していました。
私としては、それだけの年収がある人がどうして月13万円のような小銭をもらおうとするのかと不思議ですが、そのような事件もあります。
私が思うに、この女性の場合「1億円を申告していなかったことによる脱税」の方が、より大きな利益になっているでしょう。
そして、申告していなかったのだから「ついでに生活保護ももらおう」ということだったのかもしれません。
何にしても、お金への執着心が相当強いことが伺えます。
お金を求めるのはいいことですが、このような間違ったやり方で求めるのは感心できません。
個人の虚偽の申告による生活保護の不正受給は、軽いものから重度のものまであります。
たとえば埼玉県草加市に住んでいた当時33歳の女性は、名義の使い分けという高等テクニックで、累計1000万円の生活保護費用を不正受給していました。
自分の本名だけでなく、親族の名前などもフル活用し、10の市区町村で合計1000万円の生活保護を受けたということです。
つまり、1つの市区町村で平均100万円もらっていたということです。
親族の名前も使うという発想や、その名前での身分証明書を用意した行動力など、ある意味すごい女性だと私は感じます。
この能力や行動力をまじめに働く方向に使えなかったのかという点が残念ですが、とにかく変わった事件です。
なお、この女性はわずか33歳で亡くなってしまいました。
本当に健康状態が悪いということも、多くの不正受給を可能にした理由だったのかもしれないと感じます。
また、これは本人が不正受給をしていた例ではなく奥さんの例ですが、「警察官の妻が生活保護を不正受給していた」という事件も有名です。
正確には元妻で同居していた女性ですが、大阪府の40代の男性警部補が、この女性の不正受給を見逃していたとされます。
男性はこれにより減給3カ月の懲戒処分を受けましたが、3カ月分だけで済むのは甘いのではないかと思うのは、私だけでしょうか。
他にも個人の虚偽申告による不正受給の例は数え切れないほどあります。
これは統計的なデータですが、神戸市では2009年~2013年までの間に、20億円以上の不正受給があったそうです。
5年間で20億円なので、1年間で4億円になります。
件数でいうと5080件で、一番多い不正受給の手口は「収入の無申告」だったそうです。
生活保護を受けていたら、本当は1円でも収入があったら報告しなければいけません。
しかし、実際には偽名などを使ってフリーター・アルバイトとして働いている人も多いわけですね。
個人の虚偽申告による生活保護の不正受給はまだまだあらゆるケースがありますが、いずれにしても「ごく一部の人はかなり悪質」というのを実感できるでしょう。
なお、不正受給によってどれだけの金額をもらえるのかは、下の記事を参考にしてみてください。
生活保護の金額は毎月いくらもらえる?3つの目安・ルールのまとめ
暴力団による不正
生活保護の不正受給は、暴力団が組織的にやっていることもあります。
たとえば、2007年北海道の滝川市では、暴力団組合員が2億円の生活保護費を不正受給する事件がありました。
これは暴力団員の夫婦に加えて、介護タクシー会社の経営者が関与していたことも問題になっています。
生活保護では、重い病気や障害のある人、高齢者などがタクシーを必要とする時には、そのタクシー代金も支給される仕組みです。
それを悪用して、タクシー会社からの請求を装って多くのお金をだまし取っていました。
このためにわざわざタクシー会社を設立したのか、もともと運営していたのかはわかりません。
しかし、このタクシー会社の経営者も暴力団と一緒に逮捕されています。
当然ではありますが、このような暴力団による不正受給は特に徹底して取り締まっていただきたいですね。
また、未遂に終わった事例ですが、香川県高松市で、2000年に暴力団幹部3人が虚偽の住民異動届を出し、逮捕される事例がありました。
なぜわざわざ未遂に終わった事件を取り上げたかというと、3人共暴力団幹部だからです。
幹部がこんなことをして逮捕されるほど、暴力団はお金がないのかと私は驚きました。
もちろん、暴力団もピンキリでしょうから、彼らは規模の小さい暴力団だったのかもしれません。
なお、この事件はその後の生活保護不正受給の対策についてのヒントにもなっています。
この件はたまたま警察側が行政に確認をとったのですが、警察と行政が連携すれば、少なくとも暴力団の不正受給は防げるとわかったのです。
警察が何を行政に確認したのかはわかりませんが、彼らは別件でも追われていたのかもしれません。
その状態で生活保護を受給しようとするのはなかなか根性がありますが、単純に危機感がなかったのでしょう。
その他、暴力団による不正受給では、役所の担当職員が脅迫されるような形で保護認定を迫られたというケースもあります。
明らかにヤクザのような人から「お前の娘がどうなっても知らんぞ」などと言われたら、保護認定を出してしまう公務員の方もいるでしょう。
こうして考えると、警察の力がなければ暴力団が生活保護を不正受給するのは意外と簡単なのかもしれません。
このような事件が今後起きないためにも、警察による取締を強化していただきたいところです。
外国人による詐欺
私は外国人が好きなので、日本に入って来る外国人が悪く思われるようなことは書きたくありません。
しかし、明確に生活保護の不正受給を目的として大量の外国人が日本に入ってきている現実があります。
たとえば、2010年6月には、大阪市の70代の姉妹2人が、親族として中国人48人を入国させ、生活保護を受給させたケースがあります。
このケースでは、5~6月という2カ月の間に48人が来日し、日本についた直後に46人が生活保護の受給を申請していたのです。
うち32人が認定を受け、14人は却下されましたが、それでも異常な数といえます。
1人年間200万円が認められたら、これだけで合計6400万円の不正受給ということです。
この金額を彼らが共有したら年収6400万円の世帯が1つできたのと同じといえます。
もちろん、人数が多いので普通の年収6000万円の家庭ほどの贅沢はできないでしょう。
しかし、それでもまったく何もせず「ただ日本に来ただけ」の中国人が、どうしてこんなお金をもらえるのかと、不思議に思う人は少なくないはずです。
このケースでは、中国人集団を呼び寄せた2人の姉妹が中国残留孤児と見られることが理由になっています。
残留孤児は歴史的な経緯から、国も厳しく扱うことができません。
親族などを呼び寄せることも、普通の中国人より比較的しやすくなっているようです。
実際、48人の親族を短期間で一気に呼び寄せたわけですから、「かなり呼びやすいルールになっている」のでしょう。
このように残留孤児の問題があったため、大阪市も国に対して対応を要求しました。
私個人としては、役所の人も大変だなと思うと同時に、こんな不正受給をする人たちに税金が使われているのかと思うとやはりうんざりします。
なんとしても各自治体に強く対応していただき、不正受給をなくしていただきたいものです。
生活保護の不正受給はバレるとどうなる?

生活保護の不正受給が発覚すると、もらっていたお金の返還が必要になります。
しかし、わざとやっていたのか悪意がなかったのかによっても、ルールが違うというのが特筆すべき点です。
生活保護法の63条では、申告ミスなどの意図的でなかったケースに関しては、重い罰則を定めていません。
申告していなかった収入から、基礎控除などのあらゆる控除をして、残りの金額を返還金として返して終わりということです。
そして、78条では悪意があった場合のルールが規定されています。
こちらは全額返金するのはもちろん、内容に応じていくらかの増額があるというルールです。
私が少々驚いたのは、このように不正受給がバレても、まだ生活に困窮しているなら生活保護を受けられるという点です。
確かに悪事を働いた人でも野垂れ死にさせるのは良くありませんが、過保護すぎる気がするのは私だけでしょうか。
野垂れ死にはよくありませんが、たとえば国が作った施設に強制的に入れるなどして、まじめな生活しかできないようにしてはどうでしょう。
普通の生活保護受給者にそのような処置は当然必要ありません。
しかし、実際に不正受給を働いた人間なのですから、一定期間はそのような生活を強制されても当然だと私は思います。
別に刑務所のような場所ではなく、普通の建物で食事も一般的なものをもらえて、働かなくていいわけですからむしろいたれりつくせりでしょう。
せめて不正受給をした人間に対してだけは、もう少し厳しくしていただきたいと思います。
余談ですが、生活保護の不正受給の中でも特に重く、詐欺罪で逮捕されたものは懲役刑を受ける可能性もあるということです。
すべての不正受給に対してこのくらい厳しく臨んでもらえたらいいと私は思います。
不正受給をしている人はごくわずか

ここまでは生活保護の不正受給をしている人々に対して、かなり厳しいことを書いてきました。
しかし、実際にはこのような人々はごく一部で、ほとんどの生活保護受給者の方はまじめな人々です。
不正受給をする人の割合は、大体全体の0.5%程度とされています。
つまり、1000人に5人、200人に1人しかいないということです。
高校の学年で2人というと、多いのか少ないのかわからなくなりますが、パーセンテージからいえば「0.5%」は間違いなく少ないといえます。
つまり、ほとんどの人は不正受給ではなく、まじめな申請をして生活保護をもらっているということです。
そうした真面目な人々が誤解されることがないよう、不正受給に対する取締りはやはり厳しくしていただきたいと思います。